エイプリルフール

解説 〜民主主義とユニバーサルサービス〜

 いわゆる「一票の格差」の問題で,昨年12月に行われた衆議院議員総選挙を違憲とする判決が相次ぎ,その一部は選挙無効を言い渡すという,きわめて厳しい判断が示されました.
 人口当たりの議員の数は,概ね都市部で少なく,地方で多く割り振られています.このため都市部の一票は地方に比べて軽いといわれます.
 一方,地方を中心に「完全に人口比例にすると,都市部の議席ばかりになってしまい,地方の実態が政治に反映されなくなる.」という不安が主張されることも,決して軽視されるべきではありません.
 ただ,仮にそのような不安があるにせよ,選挙のしくみにおいて議席配分がいびつになることはやはり望ましくありませんし,国全体の均整の取れた発展という政策課題は,人口に比例した公平な議席配分の上で,民主主義のしくみを通じてぜひ実現していってほしいと思います.
 そのためには,都市部・地方部を問わず選挙民が「国全体の発展をどう考えていくか」という視点で,政治家に注文を付けていく必要がありそうです.
 (だいぶ前になりますが,国政選の候補者が「○○が丘の踏切をなくしましょう」とか演説しているのを見て,そんなの都議会か区議会でやってくれよ,あんたは国全体の代表だろう...と思ったことがあります.)

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 通信の世界のうち,電話などの基礎的なサービスについては,地域によって料金やサービスに格差が生じないように配慮する仕組みがあります.
 ユーザ料金だけでなく,ISP事業者がNTT東西から借り受ける光ファイバなどのアクセス料金も,東日本・西日本で格差は生じているものの,それぞれで都市部・地方を問わず,一律の料金設定になっています.
 実際には人口密度や地形などの条件によって提供にかかる原価は大きく異なりますので,都市部の原価は地方に比べて安くなるはずです.
 それでも通信サービスは全国どこでも利用できることで効用が発揮されるといえますし,そうでなければ,国の均整の取れた発展など望むべくもないでしょう.したがって,「一票の格差協賛キャンペーン」のような料金になってしまっては困ります.
 今回のネタは,一票の重みとインフラのコストがだいたい相関しているという点をとらえ,どちらもきちんとバランスの取れた制度とすることが重要ではないか?という問題提起です.

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 都市部に暮らす私たちは,農産物,工業製品,電力,観光など,多くのことで地方の人たちに支えられて生きています.
 そのようなことを念頭に,東京選出の政治家の皆さんには,真に国全体の代表としてふさわしい行動をしてほしいと筆者は願うばかりです.



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