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2001年2月9日
EditNet株式会社
(お問い合わせ先 support@edit.ne.jp)

(NTTと他の事業者との)接続ルールの見直しに関する弊社の意見

 平素はEditNet株式会社をご利用いただきましてありがとうございます.
 弊社は,頭記の件について,別記の通り意見を提出いたしました.
 今回の意見募集は総務省が行ったもので,「相互接続のときに新電電などがNTTに支払う接続料に,定額制を導入することの是非」,「通信料金に地域格差が出ることの是非」などの,日本のネットワークの将来について重要な政策の意見を募集しています.

接続料とは

 例えばNTT回線の利用者が東京通信ネットワーク(TTNet)の「東京電話」を利用する場合において,利用者は「3分8.7円」などの料金(ユーザ料金)をTTNetに支払いますが,TTNetはこの中から「接続料」として「1通話何円+1秒何円」といった計算による額(接続料)をNTTに支払います.
 接続料は,NTTの広告費などの営業経費を除いた原価+公正報酬率をトラヒックで除したものであり,一般にユーザ料金よりも割安になっています.

接続料の定額制とは

 現在NTTは「テレホーダイ」などの月ぎめサービスを実施していますが,例えばTTNetが同等のサービスを実施しようとすると,できません.
 接続料はすべて従量制であり,定額制の接続料は存在しないためです.
 この「接続料」にも,「選択的な定額制」,すなわち,ユーザの希望により定額制を選択できるようにすべきか否か,というのが今回の論点の一つです.

接続料の地域格差とは

 接続料は全国一律の原価計算により求めることとなっており,北海道と東京都では,足回りの回線利用料は同じです.
 今回東京めたりっく通信等の要望が実り,光ファイバのアンバンドル提供,すなわちダークファイバの提供が開始されましたが,端末系ダークファイバの利用料金は従来どおり全国一律とすべきか,それとも地域のコストに見合った体系とすべきか,といった点が論じられています.意見募集ではメタル回線等の接続料金にも拡大すべきか否かといった記述があり,もし格差が導入されると,ユーザ料金においても地域間格差が出るものと予測されます.


(別添)

 (意見書別紙本文)
                         2001年2月9日

          接続ルールの見直しに関する意見書

                         EditNet株式会社

 このたびは頭記の件につき広く意見を募集する機会を設けていただき,誠にあり
がとうございます.
 以下のとおり弊社意見を提出いたしますので,よろしくお取り計らいくださいま
すようお願い申し上げます.


 1 光ファイバ設備の接続料について地域別の格差を設けることの是非

 まず,弊社は東京都のみにアクセスポイントを設置してISP事業を行う事業者で
す.地域別の格差が導入された場合は,ほぼ間違いなく弊社には有利に働くものと
考えます.
 しかしながら,国民全体の公益上の見地から,端末回線への地域別格差の導入は
望ましくないと考えます.

 その理由は,次のとおりです.
 (1)ユーザ料金に地域別格差が導入されることは,大都市圏と地方の経済格差を
さらに拡大すると思われます.電気通信料金が高く設定された地域においては,時
として都市部への人口の流出,地元ベンチャ企業の成長の阻害などが予想されます.
 (2)ユーザ料金を一律とし,接続料については地域格差を設けるという案もあり
ます.しかし,一つの地域のみを対象としたサービスを提供する地元企業において
は,その原価算定に用いる接続料は,その地域のみの料金となります.
 東京などの大都市においては全国ISPよりも地域ISPの方が安価,過疎地域にお
いてはその逆など,結果として全国ISPと地域ISPでいびつな構図による競争が行
われる可能性があります.
 (3)前記の通り,少なくともユーザ料金は全国概ね同じ水準で設定されることが
望ましいことを述べました.これを実現するためには,(i)全国規模の会社が内部
補助を行う (ii)基金を設立して,都市部の事業者が過疎地域の事業者に対し間接
的に助成を行う といった方法が想定されます.
 しかし(ii)については拠出金,助成金の算定や,都市では経営の足かせ,過疎地
では助成金漬けの体質といった問題を残します.
 一方,(i)についても,ユーザ向けサービスを提供する事業者が内部補助を行う
ことは,地域系事業者等との公正な競争を妨げる可能性があります.
 この結果,細かい点での問題はあるものの,指定電気通信設備を有する事業者に
全国プールに基づく一律の接続料を設定させることには合理性があり,現行の「全
国一律」は崩すべきでないと考えます.
 各地域の事業者同士は,NTT地域会社に対する接続料を一律に負担することをも
って,間接的な全国プールを実現すべきです.


 2 定額の接続料の設定について

 NTT地域会社が「テレホーダイ」などの提供をしていることを考えると,ユーザ
回線ごとに選択的に定額制の接続料を設定することは,確かに重要なことと考えま
す.
 インタネットへの接続に特化した接続には,IP接続サービスならびにADSL接続
サービス等がすでに実現され,これらの接続料はいずれも定額制となっています.
 しかしながら,まさに「回線を保留する」という概念を持つ電話サービスや
ISDNサービス(回線交換サービス)については,本来保留時間に基づくユーザ料金
が設定されるべきだと考えます.定額制のサービスには,ベストエフォートが前
提となると考えます.
 地域IP網のようなサービスは,トラヒックの増加が予想を上回ったとしても,
最低限の接続性が損なわれるわけではありませんが,回線交換のサービスについ
ては,これは呼損等に直結するからです.
 さて,定額の接続料の導入の可能性があるとすれば,GCでの接続など,中継回
線を利用しない部分からになると考えます.
 GCでの相互接続における出線数,(中継回線容量:ユーザ)の比率などは,NTT
地域会社の「テレホーダイ」を含めて各事業者の責任による計算に基づき設定す
ればよいと考えます.
 これが実施されれば,GCから上をIPにより接続することにより,音声はVoIP,
データはIPにより伝送することで,市内を含め全国一律の電話料金を実現すること
が可能です.

 次にGC接続における,大企業と中小企業の参入障壁の違いを指摘します.
 GC接続においては,各GCごとに相互接続手続,回線手配等をしなければならず,
参入できるのは実際問題として大企業かそれに準ずる企業に限られてしまいます.
 このため,次のいずれかの方法により,ZCでの接続も可能とすることが望ましい
と考えます.
 (i)GC−ZC間を,1チャネルごとに割安な定額制で借り切ることができるようにす
る.
  このチャネルに空きがある限り,相互接続点がZCであっても,定額制による接
続が可能である.
 (ii)県内のGCとZCの間にNTT地域会社がATM網を構築し,協定事業者はZCで接続
することで,ベストエフォートのATM網を経由し,定額制によるユーザ回線収容が
可能となる.

 次に,料金の算定根拠については,GC接続については保留時間よりもユーザ数に
基づくものが望ましいと考えます.GC接続のための出線の増分等を,見込みユーザ
数で除した額を接続料の根拠とすべきと考えます.
 仮にZC接続で定額制を導入するのであれば,やはり時間見合いによることもやむ
を得ないと考えます.しかしながら,十分にトラヒックが少ない時間帯については,
ユーザ数などによることも可能と思われます.

 最後に,接続料の算定は「時間帯にかかわらず一律」となっていますが,セット
アップ部分は別として,時間従量部分は時間帯によるものとすべきです.NTT地域
会社のユーザ料金は時間帯により大きく異なりますので,接続料もこれに見合う
格差を設け,場合によっては「23時〜8時のみ,ZC接続でも選択的定額制」といっ
た,「テレホーダイ対抗サービスの設定を容易にするような」接続メニューが導入
されることも検討に値すると考えます.


 3 公衆網におけるキャリアズレートの考え方

 (1)キャリアズレート設定の範囲をどこまでとするか
 原則として,設定することに合理性がある範囲とすべきです.以下に各論を述べ
ます.

 (i)電話,ISDNの通信料
 協定事業者が料金設定をする部分については,設定に合理性があると考えます
.NTT地域会社網内で終始する呼については,その呼毎について,または現行の「
テレホーダイ」に準ずる月ぎめ料金についてのキャリアズレートを設定し,それを
元にユーザから「一括徴収」することができるようにすべきです.
 これが可能になれば,多くのISPが「電話代+インタネット料金」を従量制また
は定額制で提供することが可能になります.
 さらに,基本料へのキャリアズレートの導入とあわせ,現行の長距離事業者や二
種ISP事業者が,同じ土俵でサービスを提供することが可能になります.

 (ii)電話,ISDNの基本料
 これについては,ある程度の合理性があると考えます.

 (ii-i)ISPの着側回線に導入するキャリアズレート
 ISPの着側回線は,全く発信がないことから,ほとんど着信専用回線として利用
されています.また,ISPの回線は,着トラヒックの分布が夜間に集中しており,
トラヒック計画が立てやすいなど,一般ユーザに比べて多少原価が安いと推定され
ます.また,他の接続料金算定と同様,広告宣伝費等の営業費用を除外した費用を
原価として計算することも必要と考えます.
 このことから,ISPの着側回線等にキャリアズレートを導入することは十分検討
に値すると考えます.

 (ii-ii)エンドユーザ回線に導入するキャリアズレート
 先のNTT地域会社の接続約款改定案においては,専用サービスにおけるエンドユ
ーザ回線についてもキャリアズレートが設定されることとなっています.
 これを公衆網に拡大する可能性については,次の通り考えます.

 (a)前提
  ・キャリアズレートは,現行のユーザ料金よりも安価に設定される.
    (ユーザ個別に見たときに必ず安価になることまでは問わない.)
  ・原価計算においては,広告費等の費用が除外される.

 (b)公正なサービスの実現
 公衆網の基本料にキャリアズレートが導入されると,基本料から国際電話,イン
タネットにいたるすべての通信サービスをシームレスに提供することが可能になり
ます.(優先接続やVPN登録との積極的な組み合わせが必要不可欠です.)

 現行の仕組みでは,優先接続により常にTTNet(例)を利用するユーザについても
,基本料等はNTT地域会社からの請求となります.NTT地域会社以外との契約や,2
社への料金支払等が「わかりにくい」「面倒である」などの理由で,NTT地域会社
とそれ以外の公正競争が阻害されている可能性もあります.

 (c)多様なサービスの実現

 基本料へのキャリアズレートの導入により,ユーザは長距離会社,さらにはISP
事業者に「電話サービス」を申し込むことができるようになります.各事業者は
NTT地域会社の基本料,ならびに(NTT地域会社に限らない)接続料をもとに料金を設
定し,ユーザに請求することになります.
 協定事業者は,局間回線にVoIPを使用する,既存の長距離事業者から大口割引で
安く回線を仕入れるなどの多様な手段により,回線を選択して提供することが可能
です.
 ユーザは自分の利用態様に合わせたサービスを提供する会社(例えばクレディッ
トカードによる支払いができる会社など)を利用し,NTTグループと同じように,
すべての通信サービスの料金をワンストップで支払うことが可能です.
 エンドユーザは「どこの割引プランが一番安い」などのわずらわしさを気にする
ことなく,キャリアズレートや競争入札で仕入れた回線をわかりやすい体系で販売
することが可能になり,より多様なサービスを利用しやすくなります.
 加えて,地域ISPが「OEM電話事業」に参入した場合ですが,通信サービスそのも
のはNTT地域会社,TTNet,日本テレコムなどの各事業者の中から競争入札などによ
って仕入れを行い,エンドユーザに再提供することになります.
 中継事業者にとっても,対個人の営業等から地域ISP等の「OEM電話事業者」に対
する大口卸をすることで,単に収入が減少するような事態に至ることはないと考え
られます.



 (2) 接続の場合と非接続の場合で適用のあり方をどのように考えるか

 詳細は接続のパターンにより異なるものと思われますが,確実なことは,後述の
通り広告費等の経費を除外した原価で計算するという立場にたてば,従来NTT地域
会社が設定していた料金を協定事業者が設定・請求する場合には,反対する明確な
根拠がない限り,原則としてキャリアズレートを設定すべきであるということです.

 (3)原価に含める範囲をどこまでとするか

 最低限,広告費等の費用を除外した原価で計算し,残りは接続の形態により徹底
したアンバンドルにより求めた料金設定をすべきと考えます.
 後述の「ユニバーサルサービスの費用負担」と重なりますが,網機能等により分
けた接続メニューごとの原価計算は全国一律のものとすべきと考えます.

 (4)キャリアズレートの適用を受ける第二種事業者によるユニバーサルサービス
の費用負担について

 キャリアズレートの適用を受けるということは,権利と責任の関係において,原
則的にはユニバーサルサービスを提供する責任を負うものであると考えます. し
かしながら,前述の通り各事業者が個別にこのための拠出を行い,または助成を受
けることは現実的ではないため,少なくとも端末回線について,NTT地域会社が全
国プールによる一律の接続料金を徴収することで,それをもって最低限のユニバー
サルサービスの費用負担とすることが相当であると考えます.
 端末回線,NTT地域会社の県内中継回線の料金が全国一律の接続料で利用可能で
あれば,原則論として,例えば北海道と東京都において(中継距離の問題はあるに
せよ)同じ料金で接続することになります.
 なお,県域の地域IP網,地域ATM通信網などのを構築し,各網の使用料を全国プ
ールで設定する方式は,地域格差を縮小する上で非常に効果的な施策であると考え
ます.その意味で「フレッツ・ISDN」等のサービスは非常に有益なサービスであり
,今後もエリアの全国隅々への拡大などを実施してゆく必要があることを付け加え
ます.

 最後に,弊社は東京の事業者であり,一番提供原価の安い地域でサービスを実施
していることを認識しています.
 しかし,東京都民である私個人としても,東京に根ざした地域の会社としても,
次のように考えます.

 (1)税金や公共料金等の負担において,都市の住民や事業者が「全国プール」に
よって「不採算な地方」に対する内部補助を行うことは,十分正当なことであり,
それを「コスト見合い」の名のもとに崩すことは,都市住民のエゴと考えます.
 (2)国鉄の民営化は成功でしたが,分割は大きな失敗でした.鉄道の「全国プー
ル」が崩れた結果,従来から不便であった地方の不採算線区の運営は難しくなりま
す.その結果,「ドル箱」を持たない北海道,四国,九州の各会社では閑散線区の
廃止や第三セクタ化が次々に行われ,さらには本州3社と異なる運賃が設定される
にいたりました.
 通信インフラについても,全国プールを崩せば,即ち地方の通信ネットワークの
料金上昇などを招くことになります.通信インフラは,日本の地方振興の最後の頼
みの綱であると考えると,全国プールを崩すことは避けなければならないと考えま
す.


 4 その他の意見

 現時点において,接続料等の計算などの各所に矛盾や不公平が起こる要因として
,「通信サービスと通信インフラを提供する会社が同じであること」があげられま
す.具体的には,「相互接続の提供」と「エンドユーザへの提供」を同じ会社が行
うことに問題があるといえます.
 将来的には,徹底的なアンバンドルの実施を行い,さらには「NTT東日本と西日
本を合併させ,全国一律のサービスを行う通信インフラ会社(事業者にインフラを
貸し出すための特殊会社)と,自由な通信サービス会社(エンドユーザにサービスを
提供する会社)に分社する」といった方法が必要であると考えます.

                              以上